「私の好きな名言(高齢者編)」

 

2024年(令和24年)7月15日(最終更新2024年8月25日)

寺田 誠一

 

  

己六才より物の形状を写の癖ありて

半百の此より数々画図を顕すといえども

七十年前画く所は実に取るに足ものなし

七十三才にして稍 禽獣虫魚の骨格

草木の出生を悟し得たり

故に八十六才にしては益々進み

九十才にして猶其奥意を極め

一百歳にして正に神妙ならん与欠

百有十歳にしては一点一格にして生るがごとくならん

願くば長寿の君子予言の妄ならざるを見たまふべし

 

 90歳で没した浮世絵で世界的に著名な葛飾北斎の言葉です。北斎かぞえ75歳時の気概を示したこの跋文(ばつぶん)※には、たいへん励まされます。

  私(寺田)の超意訳:「子どもの頃より絵を描いていたが、70歳までは、たいしたものはない。70歳を過ぎて、だんだんよくなってきた。長生きして80歳・90歳・100歳にはもっとすごい作品を描くぞ!」

 

※跋文:書物や絵の終わりに書く文章。あとがき。

 

 

「六十、七十は鼻たれ小僧

男ざかりは百から百から

わしもこれからこれから」

 

 長寿(107歳)の木彫の彫刻家 平櫛田中(ひらくし でんちゅう)さんの有名な言葉です。その気概と迫力に驚かされます。100歳のとき、向こう30年間の材料(木材)を仕入れたというエピソードもあります。

  

 

「浜までは 海女(あま)も蓑(みの)着る 時雨(しぐれ)かな」

 

 作者は、江戸時代の俳人・滝瓢水(たきひょうすい)です。海女さんは、海に入れば濡れてしまいますが、それまでは、体力を消耗しないように、雨を防いで蓑を着るという句です。

 これについては、外山滋比古(とやましげひこ)さんの解説がすばらしいです。「人間は、少しでも自分を愛しみ、最後まで努力を重ねていかなければならないのである。・・・死ぬときまでは、…前向きに、少しでも美しく立派に生きる努力を重ねていくべきなのである。」(外山滋比古稿「人生の後半をどう生きるか」 藤尾秀昭監修『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』致知出版社2020年 所収)

 

 

「たのしみは 朝おきいでて 昨日まで 無かりし花の 咲ける見る時」

 

 江戸時代末期の歌人・橘曙覧(たちばなのあけみ)の短歌集「独楽吟」に所収されている一首です。「独楽吟」には、小さな楽しみがいろいろ列挙されています。

 楽しみというのは、大きいことばかりでなく、小さいことの中にもあるのだということに気づかされます。

 

 

「つひにゆく 道とはかねて 聞きしかど 昨日今日とは 思はざりしを」

 

 古今和歌集の在原業平の歌です。

 昔も今も、人生はあっという間だ、死は突然訪れるという思いは変わらないようです。1日1日を大事に、死ぬときに後悔のないように過ごしたいものです。 

 

 

「露と落ち 露と消えにし 我が身かな 浪速(なにわ)のことも 夢のまた夢」 

 

 豊臣秀吉の辞世の句です。

 百姓から関白太閤になり日本一の出世をした豊臣秀吉ですが、最後はこのような思いだったのかと考えさせられます。人生で何が大事なのか、日頃からよく考えておく必要があると思います。