「Uber EatsとTGALの会計処理(仕訳)」

 

2024年(令和6年)12月2日(最終更新2024年12月3日)

公認会計士・税理士 寺田 誠一

 

 

・Uber Eats 等のフードデリバリー会社の利用

 

 飲食店は、店内での飲食の提供だけでなく、売上増大のため、宅配サービスを実施することがあります。その場合、必要となるのが、Uber Eats、出前館等のフードデリバリー会社です。

 

 本稿では、Uber Eats(以下、Uberと略します。)を例にとって説明します。

 

 Uberを利用して、顧客の自宅や会社に料理をデリバリーした場合、飲食店の売上先は、あくまで顧客です。入金は、Uberからになりますが、売上先はUberではなく、顧客になります。Uber利用の飲食店の売上の消費税は、飲食料品の宅配・出前なので、軽減税率8%となります。Uberは、宅配代行をしているにすぎません。

 

 請求書は、インターネット上でUberが顧客に発行します(Uberが、飲食店に代わって、決済業務の代行もしています。)。したがって、Uberの顧客に対する請求書は、飲食店が課税事業者であるならばインボイス番号が記されていますが、飲食店が免税事業者であるならばインボイス番号は記載されません。

 なお、Uberの領収書はインボイスの要件を満たしていないので、顧客はインボイスの要件を満たしている請求書を保存しておく必要があります。

 

 さて、飲食店の売上計上の時期は、配達員・顧客に料理を引き渡した日となります。

 ただし、毎日その売上を把握することが煩雑・困難な場合には、Uberは1週間ごと、出前館は1か月ごとの、計算書が入手できるときでもよいと思います(その場合には、決算時に、売上のもれがないよう、決算日までの売上計上が必要となります。)

 

 飲食店は、1週間ごとに、Uberからの計算書を見ることができます。その計算書には、飲食店の売上、Uberの手数料以外に、各種項目が記載されていることがあります。

 たとえば、「消費税の調整額」が記載されていることがあります。それは、Uberが配達員に支払う手数料の消費税の端数(1円未満)が切捨てになりますが、その累積額を飲食店に還元(支払)しているものです。飲食店から見れば、入金の増加要因です。飲食店の会計処理は、支払手数料のマイナスとします。

 また、「プロモーションの適用」が記載されていることがあります。それは、「〇個注文すると1個無料」「〇円以上の注文で〇円値引き」等の販売促進の費用です。飲食店から見れば、入金の減少要因です。飲食店の会計処理は、売上値引(売上のマイナス)とします。

  

(設例)

 Uber を通して、10,000円(他に消費税800円)の飲食売上があった。後日、Uber より、手数料3,500円(他に消費税350円)を差し引かれ、また、「消費税の端数」3円が付加され、差額が普通預金に振り込まれた。

 このとき、次の仕訳はどのようになりますか(消費税は内税入力方式、入金は普通預金を使用)。

① 売上計上時

② 入金時

 

(第1法)

① 売上計上時

(借)売掛金  6,950 (貸)売 上 10,800

   支払手数料 3.850

 

② 入金時

(借)普通預金 6,953 (貸)売掛金 6,950

     支払手数料   3

 

(第2法)

① 売上計上時

(借)売掛金 10,800 (貸)売 上 10,800

 

② 入金時

(借)普通預金 6,953 (貸)売掛金      10,800

     支払手数料 3,850    支払手数料       3   

 

(第3法)

① 売上計上時

仕訳なし

 

② 入金時

(借)普通預金 6,953 (貸)売  上 10,800

     支払手数料 3,850    支払手数料     3 

 

 第1法はUberの手数料は35%と決まっているので、売上計上と同時に支払手数料を計上する方法です。この方法が、原則的な処理です。

 第2法は、売掛金の入金時に金融機関の振込手数料が差し引かれるのと同様の処理を行うものです。「消費税の調整額」等の各種項目が判明するのは、Uberからの入金時(計算書入手時)なので、第2法の方が、実務的ではあります。ただし、第2法を採った場合、売上計上時と入金時が決算日をまたぐときには、支払手数料の未払金計上が必要となります(重要性が乏しい場合を除く)。

 第3法は、売掛金を計上せずに、1週間遅れで売上を計上するものです。小規模な企業では、考えられる方法です。ただし、決算時には、まだ入金になっていない売掛金とそれに対する支払手数料の未払金を計上する必要があります。

 

 

・TGAL等のバーチャルレストランの利用

 

 飲食店が、販路拡大のため、自らの実店舗とは別のデリバリー専門店(バーチャルレストラン、ゴーストキッチン)を運営する場合があります。多くは、TGAL等のバーチャルレストラン運営会社のフランチャイズに加盟し、実店舗とは別の商品であるいわゆるブランド(名品)のデリバリーを取扱います。

 

 本稿では、以下、TGALとUber Eatsを例にとって説明します。

 

 顧客との受注・配達・決済は、TGALとUberが担当します。

 したがって、飲食店の業務は、TGAL からインターネットで注文の連絡を受け、そして調理した料理をUberの配達員を通して顧客に届けることです。このブランドの調理に必要な食材は、TGALより仕入れます。

 

 顧客の代金は、まずUberに入ります。次に、Uberの手数料を差し引いた額がTGALに入ります。そして、TGALの手数料とTGALからの仕入代金を差し引かれた額が飲食店に振り込まれます。逆に、Uberからの入金額よりもTGALの手数料と仕入の方が大きければ、飲食店はTGALに、その差額を支払う必要があります。

 

 なお、飲食店の売上先は、TGALやUberではありません。売上先は、あくまで顧客です。TGALやUberは、受注・配達・決済の代行をしているにすぎません。

 

 飲食店には、1か月ごとに、TGALからの計算書が来ます。飲食店は、その計算書を見て会計処理を行うのが現実的です。

 

 (設例)

 TGALからの計算書に、次のように記載されているとき、仕訳はどのようになりますか(普通預金を使用)。

Uberの売上216,000円(8%軽減消費税込み)

Uberの手数料77,000円(10%消費税込み)

差額:UberよりTGALへの支払額139,000円

 

TGAL より食材の仕入86,400円(8%軽減消費税込み)

TGAL の手数料14,300円(10%消費税込み)

差額:TGAL より飲食店への支払額38,300円

 

(借)売掛金   139,000 (貸)売 上216,000

   支払手数料 77,000

(借)売掛金  38,300 (貸)売掛金 139,000

     仕 入     86,400

     支払手数料 14,300

(借)普通預金   38,300 (貸)売掛金   38,300

 

(設例)

 TGALからの計算書に、次のように記載されているとき、仕訳はどのようになりますか(普通預金を使用)。

Uberの売上32,400円(8%軽減消費税込み)

Uberの手数料11,550円(10%消費税込み)

差額:UberよりTGALへの支払額20,850円

 

TGAL より食材の仕入21,600円(8%軽減消費税込み)

TGAL の手数料1,980円(10%消費税込み)

差額:飲食店よりTGAL への支払額2,730円

 

(借)売掛金      20,850  (貸)売 上  32,400

   支払手数料   11,550

(借)仕 入    21,600  (貸)売掛金  20,850

     支払手数料  1,980      買掛金    2,730

(借)買掛金         2,730     (貸)普通預金 2,730