「固定資産税・不動産取得税・事業所税の会計と税務」

 

 2021年(令和3年)8月29日(最終更新2025年3月18日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・固定資産税、都市計画税

 

 固定資産税は、毎年、1月1日現在の固定資産の所有者に対して課税される税金です。都市計画税は、毎年、1月1日現在の市街化区域内などの土地・建物(家屋)の所有者に対して課税される税金です。固定資産税・都市計画税は、国税ではなく地方税(市町村税)です(東京23区では都税。)。市町村が税額を決め(「賦課決定」といいます。)、納税者に通知します。

 固定資産税・都市計画税は、資産の存在する市町村ごとに、計算し課税されます。固定資産税評価額(時価の70%程度とされてぃます。)に税率を乗じて税額が算出されます。税率は、固定資産税1.4%、都市計画税0.3%です。

 

 固定資産税は、土地・建物(家屋)と償却資産とに分かれます。土地・建物(家屋)は市町村が最初から独自に調べて課税しますが、償却資産は納税者がまず申告します。。

 

 償却資産とは、構築物・機械装置・工具器具備品などをいいます。車両運搬具は、自動車税・軽自動車税が課税されるので、固定資産税は課税されません。

 償却資産に関する固定資産税は、取得価額から減価償却累計額を差し引いた額を課税標準とし、それに1.4%をかけます。ただし、原則として、減価償却の計算は市町村で行うので、資産の名称・取得年月・取得価額・耐用年数などだけの申告となります。仮に企業が決算で減価償却費を過少または0とした年度があったとしても、市町村は通常どおり減価償却を行ったとして課税標準を計算してくれます。

 償却資産の申告には、資産の存在する市町村ごとに150万円という免税点があります。各市町村の課税標準が150万円未満の場合には、申告や納税の必要はありません。複数の市町村の課税標準を合計すると150万円以上であっても、1つの市町村の課税標準が150万円未満の場合には課税されません。

 

 不動産売買取引のとき、買主から売主に、売買日から12月31日までの固定資産税・都市計画税の按分額が支払われるのが慣習となっています。ただし、これは、固定資産税・都市計画税そのものではなく、あくまで固定資産税・都市計画税相当額であり、不動産の売買金額の一部とされます。買主の会計処理は、租税公課ではなく、土地または建物の取得価額とします(売主の会計処理は、売上などの一部とします。)。

  

 固定資産税(土地・建物)と都市計画税とを合計した納付書は、市町村から4月頃に送られてきます。それを第1期~第4期の年4回で分割して納めるか、または、全額を1回で納めます(納付書は、分割払い用と一括払い用の両方送られてきます)。なお、第1期~第4期の分け方は6月・9月・12月・翌年2月などですが、市町村により異なります。現在は、分割払いと一括払いとで、同じ税額です(かつては、一括払いすると少し減額されました。)。

  固定資産税(償却資産)の納付書も、別個に、市町村から4月頃送られてきます。年4回の分割が可能なのは、固定資産税(土地・建物)・都市計画税と同じです。

 

 固定資産税(土地建物、償却資産)と都市計画税の会計上の勘定科目は租税公課(または公租公課)です。損益計算書の販売費及び一般管理費(以下、販管費と略します。)に記載します。製造業において工場などに課税されるものには、製造原価に算入します(製造原価報告書の経費に記載。)。

 

 固定資産税・都市計画税の税務上の損金計上時期は、次の3種類認められています(法人税基本通達9-5-1)。

① 市町村が税額を決定する賦課決定のあった事業年度

② 4回で分割払いするときは、それぞれの納期の開始の日の属する事業年度

③ 実際の納付日の属する事業年度

 

 これらの損金算入時期を踏まえて、設例を作ってみました。

 

(設例1)

 4月に本社事務所に関する固定資産税・都市計画税の納税通知・納付書が届いた。金額は120,000円(したがって、4回に分割すると、各30,000円。)。分割払いは、第1期4~6月(納期限6月末)、第2期7~9月(納期限9月末)、第3期10~12月(納期限12月末)、第4期1~2月(納期限2月末)とする。

 

(第1法)未払金を計上し、一括払いする方法

4 月 :(借)租税公課 120,000 (貸)未払金  120,000

納付時:(借)未払金    120,000 (貸)普通預金 120,000

 

(第2法)未払金を計上しないで、一括払いする方法

納付時:(借)租税公課   120,000 (貸)普通預金 120,000

  

(第3法)未払金を計上し、分割払いする方法

4 月  :(借)租税公課 120,000 (貸)未払金 120,000

各納付時:(借)未払金    30,000 (貸)普通預金  30,000

  

(第4法)未払金を計上しないで、分割払いする方法

各納付時:(借)租税公課   30,000 (貸)普通預金 30,000

 

 第1法から第4法の処理は、企業の事業年度が何月決算であろうとも、税務上の損金計上時期①または③により、販管費の租税公課が損金となります。

 

 (設例2)

 12月決算の企業が、上記設例1の分割払いを選択していた。第1期と第2期は期限内に納付したが、第3期分は12月までに納付しなかった。

 

12月決算時:(借)租税公課 30,000 (貸)未払金 30,000 

 

 設例2では、納期の開始日すなわち10月1日の属する事業年度に第3期分が未払計上されているので、その30,000円が損金となります。ただし、12月の段階では第4期分(1~2月)の納期は開始していないので、第4期分の30,000円まで未払計上しても、それは損金となりません。いずれにしても、税務上の損金計上時期②を使うのは、レアケースと考えられます。

 

 

 ・不動産取得税

 

 不動産取得税は、不動産(土地・建物など)を取得したときに課税される地方税(都道府県税)です(有償・無償、登記の有無を問いません)。固定資産税評価額に税率を乗じて、税額が算出されます。税率は土地・住宅用の建物(家屋)は3%、住宅用以外の建物(家屋)は4%です。なお、各種の特例や減額措置があります。

 不動産取得税の課税は、取得時に1回限りです。毎年課税される固定資産税・都市計画税との相違点です。

  

 不動産取得税は、会計の教科書的には、土地建物の取得価額に算入すると説明されます。しかし、不動産取得税の納付書が都道府県より送られてくるのは、不動産を取得してから1年くらい経ってからです。翌事業年度となっていることが通例です。翌期に、不動産取得税の額だけ土地建物の取得価額を増額するというのは、実務上、抵抗のある考え方です(建物の場合には、減価償却がすでに始まっています。)。

 

 税務は、都道府県が税額を決定(賦課決定)した事業年度に損金算入するとしています(法人税基本通達9-5-1)。よって、実務上は、税務が認めていることもあり、不動産取得税は土地建物の取得価額には算入しないで、通常、費用処理しています。

 費用処理したときの勘定科目は租税公課とし、損益計算書の表示は販管費とします。製造業において工場の取得などに課税されるものは、製造原価に算入します(製造原価報告書の経費に記載。)。

 

 (設例)

 本社事務所用の不動産を取得した。

① 決算を迎えたが、不動産取得税の納付書はまだ届いていない(したがって、不動産取得税の金額は不明)。

② 翌事業年度に、都道府県より、不動産取得税の納付書500,000円が届き、普通預金で納付した。

 

① 仕訳なし

②(借)租税公課 500,000 (貸)普通預金 500,000

 

 

・事業所税

 

 事業所税は、大都市の都市環境の整備・改善に要する費用に充てるための地方税(市町村税)です(東京23区では都税。)。東京23区など、人口30万人以上の都市にある事業所に課税されます。

 計算方法は、都市ごとに、次のようになります。

資産割(床面積×600円)+従業者割(給与総額×0.25/100)

 なお、免税点があり、資産割は事業所の合計床面積が1,000㎡以下、従業者割は従業者数100人以下の場合には、課税されません。したがって、中小企業には、課税されないことが多いと思われます。

 

 事業所税の会計上の勘定科目は租税公課とし、損益計算書の販管費に表示します。製造業において工場などに課税されるものには、製造原価に算入されます(製造原価報告書の経費に記載。)。事業所税の未納付額は、貸借対照表において未払金の内に含めます。金額が多額の場合には、単独の未払事業所税などとします。

 

 事業所税は、納税者(企業や個人事業者など)が申告して納付します。期限は、決算日の翌日から2か月以内です。つまり、法人税・法人住民税・法人事業税・消費税と同じです(ただし、申告期限の延長制度はありません。)。

 

 税務上は、事業所税の申告書を提出した事業年度において損金に算入されます。したがって、未払計上は損金となりません。翌期の納付時に、損金となります(ここまでは事業税と同じですが、事業所税には、事業税と異なり、中間申告はありません。)。中小企業においては、重要性の原則を適用して、未払計上しないこともあると思われます。

 なお、製造原価に算入される事業所税を未払計上した場合には、その部分に限り損金算入が認められています(法人税基本通達9-5-1)。損金不算入とした場合には、期末の仕掛品や製品は損金となっていないので、事業所税の調整計算が複雑になるからでしょう。納税者の事務手数に配慮した規定です。

 

   

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。