「法人税(含追徴税)・住民税・事業税の会計と税務」
2021年(令和3年)8月29日(最終更新2025年3月16日)
寺田 誠一(公認会計士・税理士)
・「利益」と「所得」の差異 4項目
簿記や会計では、利益は次の式で表されます。
収益-費用=利益
それに対して、税務では、益金から損金を差し引いて所得を算出し、所得に対して課税されます(所得が課税標準です。)。法人税は、課税の公平を重視するため、損金の一部については客観的画一的な基準(損金算入限度額)を設けています。
益金-損金=所得
収益と益金、費用と損金とは、大部分は同じですが、少し違いがあります。その違いには、次の4種類のものがあります。
① 益金不算入:収益ではあるが、益金とならないもの
② 益金算入 :収益ではないが、益金となるもの
③ 損金不算入:費用ではあるが、損金とならないもの
④ 損金算入 :費用ではないが、損金となるもの
利益と所得との差異4項目ですが、実際には、加算となる損金不算入項目(具体的には、法人税・住民税、未払事業税、未払事業所税、税法限度額を超えた役員給与・交際費・寄附金・減価償却費・引当金繰入額など)が大部分で、他の3項目はごく少数です。したがって、通常、決算書の当期純利益よりも税務上の所得金額の方が大きくなります。決算書は赤字(当期純損失)であっても、税務上は黒字(所得)となり、法人税等を支払うという場合もあり得ます。
・「所得」の算出方法
法人税では、試算表や総勘定元帳などから改めて益金・損金を集計するのではありません。収益と益金、費用と損金は大部分が同じなので、株主総会で承認された損益計算書の税引後の当期純利益をもとに計算します。当期純利益からスタートして、収益と益金、費用と損金とのくい違いを加減して、所得金額を求めます。
当期純利益を基準に考えると、益金算入と損金不算入は当期純利益にプラス(加算)し、益金不算入と損金算入は当期純利益からマイナス(減算)します。その結果、所得金額が算出されます。実際には、この計算は、次のような形式の法人税申告書別表四で行います。
当期純利益 +加算項目(益金算入、損金不算入)― 減算項目(益金不算入、損金算入) = 所得金額
益金から損金を差し引いた所得金額がマイナスのときは、欠損金額といいます。この税務上の欠損金は10年間繰越しが可能です(帳簿をきちんとつけ法定期限内に申告する青色申告が前提)。たとえば、×××1年3月期で生じた欠損金は、××11年3月期までの10年間に生じた毎期の所得から順次差し引くことができます(中小企業には制限がありませんが、大企業には毎期の所得の50%までという差引金額の制限があります。)。この点は、事業年度ごとの計算を行う法人税の例外です。
・「法人税等」と「未払法人税等」
法人税(地方法人税を含みます。)・法人住民税・法人事業税(特別法人事業税を含みます。)は、損益計算書の税引前当期純利益(または税引前当期純損失)の次に、法令に従い算定した額を、「法人税、住民税及び事業税」(以下、「法人税等」と略します。)として表示します。これらは、いずれも、「所得」を基準にして計算される税金だからです。
地方法人税は、国税ではなく地方税ですが、法人税と一緒に(同じ申告書で)申告納付します。その後、国から地方自治体に配分される地方交付税の一部となります。
法人税・法人住民税・法人事業税の貸借対照表上の科目は、流動負債に計上される「未払法人税等」です。これらの税金の納付義務は期末に成立するので、未払法人税等は未払金の一種です。ただし、その重要性から、単独の科目とされています。税務上は、未払法人税等のことを「納税充当金」と呼んでいます。なお、未払法人税等にも重要性の原則は働くので、概算額での計上も認められると考えます。
損益計算書の「法人税等」と貸借対照表の「未払法人税等」では、法人税等の方が大きくなります。法人税等は1年間の負担すべき税額を示すのに対して、未払法人税等はそのうち期末に残っている租税債務を示すからです。両者の相違点は、通常、①中間納付額と、②受取利息配当金にかかる国税です。1年間の負担すべき法人税等から、すでに支払済みである中間納付額や受取利息配当金にかかる国税を差し引いた額が、期末の未納付額となります。
損益計算書の法人税等-中間納付額-受取利息配当金の国税=貸借対照表の未払法人税等
受取利息配当金に課税される国税(源泉所得税)は法人税から控除することができます(たとえば、預金利息にかかる国税は利息額の15.315%です(本来15%の源泉所得税に、その2.1%の東日本大震災の復興特別所得税が加わります。)。それらは、すでに支払済みの法人税等(法人税等の前払い)という性格です。したがって、損益計算書の法人税等には含まれますが、貸借対照表の未払法人税等には含まれません。
ただし、受取利息配当金に課税される国税のうちには、税額控除の適用を受けられない金額、すなわち法人税から差し引けない部分があります。これらは、営業外費用に記載します(勘定科目は、「営業外租税」など)。受取配当金の元本である有価証券などを保有している場合、元本の所有期間に対応する部分のみが税額控除の対象となり、対応しない部分は税額控除の対象とならないからです。預金の受取利息にかかる国税は、すべて税額控除の対象となります。なお、税額控除の対象とならない国税であっても、金額の重要性が乏しい場合には、税引前当期純利益の次の法人税等に含めることができます。通常、税額控除の適用を受けない額は少額なので、この処理を適用することが多いと思われます。
さて、法人税と法人住民税(法人都道府県民税、法人市町村民税)は、法人の利益の一部を国や地方自治体に分配するという考え方に基づいています。したがって、法人税・法人住民税は、会計上は費用ですが、法人税法上は、損金不算入となっています。
・追徴税額・還付税額
法人税・法人住民税・法人事業税の修正申告や更正(※1)・決定(※2)による追徴税額・還付税額は、損益計算書上、法人税等の次にその内容を示す科目で表示します。延滞税(※3)・加算税(※4)・延滞金(※3)・加算金(※4)も、追徴税額に含めます。
ただし、追徴税額・還付税額の金額の重要性が乏しい場合には、法人税等に含めて表示することができます。この場合も、通常、法人税等に含めることが多いと思われます。
税務上、法人税・法人住民税の追徴税額は損金不算入、還付税額は益金不算入です。
※1:修正申告:当初申告の所得・税額が過少であった場合に、正しい所得・税額で申告すること(増額の場合です。)
※1:更正:納税者の申告内容に誤りがある場合、税務署が正しい所得・税額に直すこと(増額と減額両方の場合があります。)。減額の場合には、通常、納税者が先に「更正の請求」という手続きを行うことが必要です。
※2:決定:納税者が申告をしなかった場合、税務署が所得・税額を決めること。
※3:延滞税、加算税:納期限より遅れたことに対する利息。延滞税は国税、延滞金は地方税。
※4:加算税、加算金:納期限より遅れたことに対する罰金。加算税は国税、加算金は地方税。
追徴税額のうち未納付額は貸借対照表上、「未払法人税等」に含めて表示します。還付税額のうち未収分は、「未収還付法人税等」などその内容を示す科目で表示します。
・法人住民税
法人住民税には、法人都道府県民税と法人市町村民税の2種類があります。
① 法人都道府県民税
東京都では法人都民税、大阪府では法人府民税、北海道では法人道民税、その他の県では法人県民税となります。
② 法人市町村民税
市では法人市民税、町では法人町民税、村では法人村民税となります。
なお、東京23区では、法人市町村民税は存在しません。それに相当する税額は、法人都民税のうちに含まれています。
・法人事業税、特別法人事業税
法人事業税は地方税であり、都道府県の税金です。ただし、法人事業税は、利益の分配ではなく、法人が都道府県から受けている各種行政サービスに対する対価であると説明されます。そのため、損益計算書では、かつては「租税公課」に計上されていました。
しかし、現在では、法人税・住民税とともに所得を基準として計算するという側面を重視して、損益計算書の末尾近くに「法人税住民税及び事業税」に含めて表示します。
法人事業税は、行政サービスに対する対価なので、税務上、法人税・法人住民税とは異なり、損金算入されます。正確には、法人事業税の申告書を提出した事業年度、すなわち翌事業年度で損金となります。いいかえると、通常、申告と納付は同じ年度に行うので、法人事業税は現金主義で損金になるということです。たとえば、×2年3月期の法人事業税は、申告書の提出は翌期になるので、×3年3月期において損金となります。×2年3月期で未払計上しても、損金とはなりません。
なお、法人事業税の上期分について中間申告(※)を行う場合には、中間申告書を提出した事業年度、すなわちその期で損金となります。たとえば、×2年3月期の上期(×1年4~9月)分の法人事業税の中間申告書は下期(×1年10月~11月)に提出するので、上期分については×2年3月期において損金となります。
※中間申告::前年度の法人税が20万円を超えた場合、当年度に法人税や法人事業税などの中間申告を行う必要があります。
資本金1億円超の会社には、法人事業税の外形標準課税が行われています。この外形標準課税の付加価値割・資本割の金額については、「販売費及び一般管理費」に表示します。利益(所得)を基準に計算されてはいないからです。貸借対照表上の未納付額は、未払法人税等に含めて記載します。
特別法人事業税は、国税ですが、法人事業税と一緒に(同じ申告書で)都道府県に申告納付します。その後、いったん国へ払い込み、再度、人口を基準として都道府県に配分されます。特別法人事業税は、法人事業税の一種と考えられるので、税務上、法人事業税と同じ取扱いになります。
※本稿は、次の拙稿をもとに、大幅に加筆修正したものです。
寺田誠一稿『経理の疑問点スッキリ解明 第10回 法人税等』月刊スタッフアドバイザー 2010年(平成22年)1月号
寺田誠一稿『会計と税務の交差点スッキリ整理! 第1回 「会計」と「税務」の多重構造を理解する!』月刊スタッフアドバイザー 2011年(平成23年)8月号
寺田誠一著『ファーストステップ会計学 第2版』東洋経済新報社2006年(平成18年) 第4章 税効果会計と決算書
※損益計算書の「法人税等」と貸借対照表の「未払法人税等」の関係について詳しくは、「「法人税等」と「未払法人税等」の計上手順と設例」参照。
※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。